延命治療か尊厳死か?
園芸種には八重のものあるが、私はこの自然の一重の素朴なヤマブキが好きである。
大田道潅の歌のあるとおり、確かに花は咲けども種はならない。しかし、小枝の挿し木が容易で、簡単に増やせる。どんどん根が周囲にはびこって、そこから芽が出て、どんどん新しい株が成長し、数年すると大きな株になり、周りをどんどん侵食し、遂にはもてあまし気味になる。
でも、黄緑色の若葉と黄色い連なった花が調和して美しい。庭の片隅に欲しい花のひとつである。
医師に人工呼吸器を外され、末期患者7人が死亡、、、、安楽死か尊厳死か、、延命治療の中止という難しい事件が起こっている。
実際の場合、本人が既に意識不明か、本人の意思を確認することが非常に困難な場合が多い。それだけに、家族の同意が重要なのは言うまでもない。
6年前、丹波の綾部の田舎で元気に一人住まいだった86歳の母が胆嚢癌になり、4月初に長男であるナベショーの静岡に引き取った。
グルメだった母を、週末はあちこち車で連れ歩いた。魚市場で美味しい魚を買ったり、寿司屋や料亭で美味しいものを食べて大満足だった。
花の好きな母は気分が良い時は、庭の草引きもやっていた。次々と咲く庭の花を縁側に座って見ていた。 5月の末から6月になって、花ショウブやアジサイが咲き終わると、もう主だった庭の花は終わってしまう。
本人には、肝臓に出来物が出来ている、、としか教えていない。こちらの総合病院の医師の診断では「夏頃まででしょう」という。担当医のW先生には初対面の診察時に、「もう十分長生きしたので、延命治療はしないように、、しかし、癌による苦痛だけは取り除いて欲しい」とお願いした。
週二回、自宅から病院に通ってW先生の診察と、栄養剤の点滴を受けた。 先生は「癌は成長しているので黄疸症状が出たら、あと一ヶ月くらいでしよう」とのことだった。
夏になり、だんだん体力が弱り、総合病院へ行くことが困難になってきた。黄疸症状も出てきた。しかし入院は避けて、最後まで出来るだけ在宅看護により家族と一緒に過ごさせたかった。
NHKの「今日の健康」のテキストに訪問看護についての記事があった。NHKに直接問い合わせると、静岡県で訪問看護をやっている医療機関はわずか2箇所、幸いにも、そのひとつは、自宅より数キロしか離れていない岡部町のM医院であった。
M先生に往診していただき、点滴による水分補給と、とっさの時の処置をお願いした。M先生は、「在宅看護は家族にとって、たいへんなストレスがある。決して頑張らないように」とアドバイスしてくれた。
在宅での点滴による水分補給に努めたが、癌の進行と共に心臓発作が起こって、総合病院に緊急入院した。そして2週間後の11月12日に息を引き取った。
妻、長女、東京の姉、京都の妹、単身赴任先から週末に帰るナベショー、全員が3交替で病院に泊り込んで世話した。入院中、話も出来たし、意識もかなりはっきりしていた。
京都の妹に「綾部の家から、大島の上等の着物を持ってくるように。これからの長い旅路に着るから」と。最後は東京から来た姉に見取られて召された。
幾度かW先生から人工呼吸などの延命治療について、私に確認があったが、「母はもう十分幸せな人生を送りました。痛みによる苦痛だけ除いてください」と断った。
だだ、「最後まで、あらゆる医学の可能性ある最新の治療を受けさせて、一日、一秒でも長生きさせるのが家族の務めである」との正論をかざして、兄弟、親戚の一部が主張して、身内間でギクシャクと対立していた場合が問題となる。
今回の事件、その背景はどうなんだろうか?
人生の最後、誰もが避けられない死、いかに「死」を迎えるか、は本人も家族も重要なこと、生前から十分に意思表示をしておくことが必要である。
「美しい死」、「生き様、死に様」、死は美学であり、自分で演出できる最後のセレモニーでもある。
今日の夕食、鮭のムニエル、たっぷりと野菜を盛り付けた。新ジャガイモ、畑のほうれん草、キャベツ、トマト、、、それに自家製オリーブの塩漬け。昨年秋に庭のオリーブの木、バケツ一杯実を収穫して、苛性ソーダで灰汁だしして塩水に漬けて冷蔵庫に保存していたのである。 それから、蕪のスライスの塩揉み、、、単純だけど美味しい。
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コメント
私の母も5年前に脳梗塞で倒れ、3年前再発、入院しましたが、1年後には『偽膜性腸炎』の悪化で人工肛門となり、その頃から流動食も嚥下出来なくなって、今度は喉に穴を開けチューブで液体注入する手術だと言われました。回復の見込みが無いと宣告されたら、点滴が限度で、管が何本も体に巻き付いている状態は医療であっても治療ではないと私は思うのですが、親戚は「息をしている間は治療を」と・・・愛する人の死で、自然死か延命医療かで揉めるなんて、哀しい。
投稿: ばら色婆ァバ | 2006年3月30日 (木) 08時36分
日々、極度のストレスの中で側で看病している直接の身内ではなく、外からの親戚、兄弟などが、往々にして「命ある限り、治療を、、」という正論をのたまうのですよね~。善意で言っているのでしょが、、
投稿: ナベショー | 2006年3月30日 (木) 23時42分
美しい画像~可愛いモンタ~羨ましい生活
初めの処から読ませていただいています。
お母様への お気持ちよく判ります。
私も8年前に父を看取りました。86歳でした
最期の2ヶ月だけ入院しました。延命はせず苦痛だけを除く治療でした。
私の場合は同居でしたが、離れて暮らす妹は、延命治療を望み手は出さず~~今87歳の母の介護{老老介護}です。
血を分けた子ではない私の夫、息子、娘に支えられて、、でも疲れます。
血縁関係なんて~~糞食らえって開き直って毎日過ごしています。
暖かな気持ちを戴きました。
有難うございました。
ムックも大きなお腹で捨てられたネコです。モンタに負けない幸せものですよ。
投稿: ムックのお母ちゃん | 2008年8月30日 (土) 18時48分
ムックのお母ちゃんさま
8年前にお父様を看取り、今はお母様の介護、、、、その大変さは、日々、刻々、極度のストレスにさらされながら身近に看病してる当事者にしか、わからない、、、疲れますね。
ムックちゃん、、幸せな猫ちゃんなんですね!
投稿: ナベショー | 2008年8月30日 (土) 20時03分